「Passing on Your Legacy through Decisions about Life, Death, and Faith」Olympia Diocese主催という、このお題自体、ちょいと説明がいるかもしれません。
- Legacy: 個人や集団が築き上げてきたもの。あるいは、その派生で遺産。
ちなみに、ソフトウエア業界でレガシーといえば、「昔からの経緯でそうなっていて、変更しにくい事項」というニュアンスで、ユーザには不都合だろうけど、直したくないときの決まり文句、あるいは自分のせいじゃないんだよという言い訳に使ったりもいたします。 - Diocese: 教区。ビショップが管轄している範囲をDioceseといいます。エピスコパル派の場合、シアトルが所属するOlympia Dioceseはワシントン州の半分(山脈の西側)。けっこう広い範囲ですね。
- ちなみに、エピスコパル(Episcopal)派は、アメリカ内の英国国教会派を意味します。一言でいえば、知的リベラル、ただし儀礼は伝統的に…
日本で、終活という言葉が出来たのは、2009年ごろとのことですが、昨日のセミナーから、アメリカでの、それもキリスト教会系のワークショップの模様をお伝えいたしましょう。
教会系ワークショップのメリットは、ある程度の共通バックグラウンドを持っていることでしょうか。人生の最後について語るにしても、腫れ物に触るような持ちまわった言い回しをせずとも良い。「どんな人にも、必ず平等に訪れるもの。人生の自然なフェーズ」としてスタートできます。
ちなみに、教会によっては、お葬式のことを、「Celebration Life Liturgy」ということもあります。ちょいと言葉をいじり過ぎている(PC風に)感もあり。私的にはFuneralで良いと思うのですが。
我らがビショップのお話しに続き、Speaking Of Dyingという30分ほどの映画を上映。そこには、残されるものとの対話、代理人の選択等の法的な準備、ホスピスあるいは緩和医療、そしてワシントン州の尊厳死法(2008年に成立)などが語られています。
そして各分野の専門家が、それぞれの領域での講義をしてくださいます。
法的側面:
基本中の基本―Physician Orders for Life Sustaining Treatment (POLST)、通称「緑のフォーム」を必ず記入して、冷蔵庫の前面に貼っておくこと。
こちらでは、万一の場合どのような医療をやってほしいか、あるいはやってほしくないかをあらかじめ記入しておくフォームがあります。万一の場合には、意識が明確でないかもしれないし、意思疎通できる状態とは限らない(さらには英語で法律的な難解なことを正しく理解&伝えられない危険性は大!)。
「冷蔵庫の前面」ってのには笑っちゃいましたが、緊急チームやサポートの人たちは、かならず冷蔵庫に貼ってあるものをチェックするとのこと。こちらでの、慣習なのですね~。
(我が家の冷蔵庫にも貼ってあります) |
同様に大事な書類が、「Durable Power of Attorney」(委任状?)で、万一の場合の代理人を指名いたします。これには、2種類あって、別々にあるいは総括的に指名することが可能。
- Durable Power of Attorney for Health Care Directive: 医療面での代理人
- Durable Power of Attorney for Finances: 主にWill(遺言状)に沿った遺産処理の代理人
米国で、有効な遺言書(Will)が無く、身寄りもいないと財産はすべて国(か州?)が没収…という話もあり。それは哀しいですので、私の場合、遺言書はちゃんと作っておかなければまずい…。
さらに、代理人(指名されていない場合、デフォルトでは親族)が定まっていない場合には、州の法廷が代理人を指名するのだとか。ただしそれが決定するまで、持ち家には、一切の人の立ち入りが禁止されることもある!!
ペットのいる家では許されざる事態です…
我が家ではこれも、一緒に冷蔵庫に貼ってあります。でも不完全な個所もあり、見直さなければ!
ホスピス
日本的感覚だと、病院みたいにベッドがある場所を想像していました。が、現在ホスピスワークのほとんどは、Home(自宅、介助付きアパート、施設、時には病院)へ訪問して、緩和ケアとサポートをおこなうのだとか。
- 緩和ケア以上にサポートの重要性が高い。本人サポート以上に家族、周りの人々へのサポートが大事。
- 法的に、余命6か月以下と診断され、条件にあう診断書が出されて、初めてホスピスにApplyできる。
- 定期的(60か90日ごと)に状況をアセスする。余命6か月でないと診断された場合には、Discharge(退院?ホスピスケアを停止)される。実際に、よくあるケースなのだとか。ホスピスに来た段階で、回復目的の投薬や治療を一切やめるので、それで調子が良くなることもあるそうです。
尊厳死法
ワシントン州では、Washington Death with Dignity Actが2008年に可決されました。これは、本人の意思で、回復の見込みが無く、余命が6か月以下と診断されて、耐え難い苦痛に悩まされている場合には、致死性の錠剤で眠るようにして、自分の最後の時を自分の手で決める可能性を与える法律。
こちらも、条件や手続きはかなり込み入っています(さすがアメリカ)。
病状の診断はもちろん、精神的、神経的には健全(鬱状態ではないこと)であることが証明されなければいけませんし、期間をおいて、複数の専門医からの証明が必要となります。また、北欧のように医師が手助けをしてはいけません。本人が自分自身の手で錠剤を飲むことが条件ですので、身体を動かせなくなってしまった場合には使えない手です。
この法律は、リベラルなものとして誇りに思うワシントン州民が多いようです。
一方、この法律を実際に使うかについては、個人的にかなりの幅があるように思われます。ホスピスやチャプレンの話では、実際に使わなくてもそのオプションがあると思うと楽になる人、あるいは、Death with Dignity Actを持ち出すのは、自分の死について話し出すきっかけとなることも多いとか。
ちなみに、2014年にこのActにより錠剤を入手した人は、176人。そのうち実際に錠剤を使用して亡くなった方々は、126人(ワシントン州のレポート)。処方箋の総数はレポートになし。
ラウンドテーブルディスカッション
専門家のレクチャーに続いて、ディスカッションのお時間となるのは、USでのワークショップの常。今回は、各テーブル(つまり3~4人の参加者ごと)に専門家たちが回ってくる。
法律家、ホスピス関係者、そして聖職者とそれぞれ、30分くらい質疑応答や、ディスカッションを重ねていきます。
メモリアル・プランニング
聖職者とのディスカッションのネタは、自分のメモリアル・プランニングでありました。
喪主をやると、大体どんなことを決めなきゃいけないか分かりますよね…。そんなこんなをあらかじめ記入して、教会に保管しておいてもらうことも出来るんです。
テンプレートには、誰が聖書を読むか、どの式文を使うか等々。適当に決めてくれていいよ~という項目も多いのだが。ちなみに、「遺族がもめるのは、どのあたりですか?」と聞くと、賛美歌、および聖書朗読の個所の選択だとか。そこで揉めるのか~?
ちなみに、USでも最近は、ほとんどのメモリアルサービスは、Ash(灰)となります。火葬の後、小さな壺に入った灰とともに、礼拝を行うもの。形式は聖餐式(ミサ)の説教部分が故人にちなんだ話になる程度で、普通の礼拝とほぼ同じなのです。
Casket(お棺、遺体を教会に運び込んで行う形式)はもう珍しくなっており、数年に一度くらいでしょうか。
当方、教会のAltar Guild(祭壇ギルド)メンバーなので、時折お葬式の花も準備しております。日本のように、白い花という制約は無いですねえ。故人の意向により「真っ赤なバラをたくさん!」とリクエストされたこともあります。
日本ではまずない発想かもしれませんね。お花の量も日本に比べると、ほんとうに控えめです…。
雑感
ラウンドテーブルの議題はいずれも、参加者は「分かっているんだけど、まだやってない」あるいは「やってるんだけど、完成していない~」という状況。
今回、複数の専門家が各参加者に逆に質問してきました「やることをブロックしているのは何だと思う?」「やるのに一番の障害となっているのは何?」
これは、面白い問題の切り崩し方だな~と感心した次第。
やらなきゃいけないことはわかっているけど、やれていない。そんな時に、ただ「頑張ろう!」と思っても、なかなかやれない。何がブロックしているかが分かれば、何故か気が楽になって、やれる可能性が高まるのかもしれませんね。ちょいとしたTipsでありました。
【公演予定】
3月3日(木曜) シアトルFirst Thursday Artwalk。DAIPAN Butoh+ @ TK Artistloft
7時半か8時ごろから。詳細はまた後程…
お時間とご興味のあるかたは、スケジュールにメモしておいてくださいませ。当方のパフォーマンスでは、ちょいと意外なコラボレーションを予定しております。
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